巻頭言
リハビリテーション・マインド
田中 理
1
1横浜市総合リハビリテーションセンター
pp.717
発行日 2006年8月10日
Published Date 2006/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100348
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リハビリテーションとは,病気や外傷により障害を受けた人が,その障害を克服し,現実的に可能な最高度の人間的復活を遂げる営みである.人間的復活に向けて可能な限りの技術的支援をすることが,われわれリハビリテーション従事者に課せられた最大の役割である.かつて上田敏先生(現・日本障害者リハビリテーション協会顧問)は,リハビリテーションを「全人間的復権」という言葉で表された.リハビリテーションが可能な限りの最高度の人間的復活を目指すものであれば,インテグレーションやインクルージョンの理念が社会通念として常識化され,リハビリテーションを保障する法制度体系や支障なく生活活動ができる住環境基盤が社会的に整備されなければ,より高度な人間的復活の達成はあり得ない.恐らく上田敏先生は,このような意思あるいは意志を込めてリハビリテーションを「全人間的復権」と言い表されたのであろう.
世界保健機構(WHO)は2001年,新しい国際生活機能分類(ICF)とそのモデルを提唱した.ICFモデルでは,「障害(生活機能低下)」は社会全般の影響を受けるものであり,リハビリテーションの達成度は障害者個人が所属する社会の成熟度に強く関係するということが明示された.ここに上田先生が「全人間的復権」に込められた理念を含めて,リハビリテーションの今日的な総合概念が整理されたと言ってよかろう.
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