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はじめに
体位排痰法は,重力を利用して気管支分泌物の移動を改善し,換気と血流のマッチングをよくし,機能的残気量を正常化する目的1)で行われる.排痰肢位に関しては,Humberstone2)やCiesla3)を含め多くの諸家によって報告されている.また真淵4)は,人工呼吸器中の術後患者や重症患者では頭低位等の誘導気管支に一致する肢位をとるのは難しいとして,Humberstone2)の報告をもとに修正した排痰肢位を提案している.しかし,排痰肢位と実際の効果に関する報告は少ない.高橋ら5)は,邦人肺標本を使用し,上葉区・上下葉区における従来の排痰肢位および修正排痰肢位での亜区域気管支の角度を測定し,期待されるドレナージ方向との解離がないか検討を行った結果,姿勢変化多彩な従来の排痰法の場合でも29%の肺で期待する区域ドレナージが望めなかったと報告している.
気道内分泌物を喀出するためには,気管支の線毛運動,重力の作用,側副換気の役割,呼吸筋力等さまざまな要素が関係している.分泌物を喀出させるための手段として体位排痰法があるが,臨床の場面にて,体位排痰法を行う際,排痰を期待する区域に続く気管支の走行をイメージすることが困難であること,また期待される効果が得られない場合を経験する.そのようなことから当院では,新たな取り組みとして,個々の患者に適した排痰肢位を選択するために,補助的評価として胸部CT画像をもとに,炎症を起こしている肺区域に続く区域気管支の角度および走行を評価し,排痰肢位を再検討する試みを行っている.これにより,より効果的な体位排痰が期待されるが,脳血管障害や外傷等の超急性期や急性期で活動が制限され最良な排痰肢位を選択できない場合がある.
今回われわれは,胸部Computed Tomography(CT)を用い,生体における区域気管支角度の計測を行い,それをもとに,最良な排痰肢位および活動が制限されるなかで,適した排痰肢位の検討を行った.
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