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はじめに
新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)におけるリハビリテーションの普及に伴い理学療法士による活動・介入報告は増加傾向にある.埼玉医科大学総合医療センター(以下,当院)は,約1,000床の病床数を有する三次救急病院かつ総合周産期母子医療センターである.当院NICUの病床数は60床を超える.NICUでは専任理学療法士あるいは小児専属の理学療法士が小児チームとして活動しており,当院独自で作成したクリニカルパスをもとに早期からの理学療法を提供している(表1).
NICUに入院中の児の多くは,呼吸や循環動態が不安定であり常に重症管理を要する.NICUでは,高度な医療機器の使用による全身管理を必要不可欠としているなかで,病態や週数に応じて医師や看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師が多職種で連携しながら日々,安全な医療を提供している.
NICUでの理学療法士がかかわったインシデント事例として,日本医療機能評価機構(2023年4月時点)は,陳旧性骨折の発見,ギプス治療中の骨折,挿管管理中の児への関節可動域練習中の酸素飽和度(SpO2)低下の3件を報告している1).当院の小児チームでは,2014年頃から医療安全の取り組みの一つとしてインシデントレポートを積極的に活用することにした結果,インシデントレポートの年間平均報告件数は,2014〜2021年の過去8年間で年間50件であった.われわれはNICUにおける理学療法士の医療安全をテーマにした活動報告として,介入中の啼泣に伴うバイタルサインの変動や体動に伴う気管挿管チューブや経管栄養チューブの事故抜去を報告している2).これらのことから,NICUに従事する理学療法士にとって医療安全の視点は必要不可欠であり,医療安全文化を醸成していく取り組みが重要であると考える.
本稿では,当院NICU勤務の理学療法士が,安全に診療を提供するために行っている取り組みについて述べる.
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