特集 システムとしての姿勢制御—メカニズムの解明から臨床応用まで
—エディトリアル—システムとしての姿勢制御—メカニズムの解明から臨床応用まで
森岡 周
1
Shu MORIOKA
1
1畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
キーワード:
姿勢制御
,
システム
,
理学療法
Keyword:
姿勢制御
,
システム
,
理学療法
pp.258-259
発行日 2023年3月15日
Published Date 2023/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202967
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「立つ」,「歩く」といった基本的動作能力の改善・向上を目的に理学療法が展開されることは言うまでもない.なかでも安定した立位姿勢の実現は,歩行を含めた日常生活を支える身体運動・動作の基盤となるが,神経疾患や運動器疾患を呈した場合,あるいは加齢によって姿勢バランスの安定性が失われてしまうと,結果として,日常生活における活動を阻害してしまう.
他方,姿勢動揺が減少し,見かけ上安定しているようにみえても,それだけでは姿勢制御が正常化しているとは言えない.例えば,パーキンソン病では健康な若年者よりも姿勢動揺が減少することが報告されている1).一方で,パーキンソン病では動揺周波数が高周波化するといった質的な変化がみられることがわかっている2).動揺周波数の高周波化は姿勢制御における関節の剛直化を示すと言われており3),最近では,このような関節の剛直化は,過度な意識に基づく姿勢制御によって起こると言われ,むしろ柔軟的な制御を奪ってしまうと問題視されている.こうした問題を捉えるために,姿勢制御評価においては,動揺の増大/減少といった量的指標のみならず,動揺速度や周波数といった質的指標も捉えるべきであると言われるようになってきた.そして,姿勢動揺の減少のみを目的としたステレオタイプな理学療法の呪縛を解く必要もあると言えるであろう.
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