連載 とびら
一人の人間としての自分が理学療法士であるということ
三浦 正徳
1
1南昌病院
pp.1
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202901
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私が理学療法士として勤めるようになって四半世紀が過ぎた.私が初めて理学療法の現場に触れたのは,養成校1年次の見学実習である.真冬の雪深い時期だった.交代浴療法の冷水をつくるため,スコップを持ち外の雪をバケツいっぱいに入れた指導者が「理学療法士は白衣の土方」と笑いながら話してくれたのが懐かしい.「理学療法士は知恵と熱意と創意工夫で使えるものはすべて使い,汗をかいて治療にあたる」,そんなことを伝えてくださったように思う.私が学生から新人期を過ごした1990年代中頃〜後半は,まだ,どこかそんな牧歌的空気が流れる時代だった.それから考えると,今の理学療法士を取り巻く環境の変化には隔世の感を覚える.
今や理学療法士が理学療法士として活躍できる場や機会は各段に広がった.医療機関や各種施設,教育機関で働くのはもちろんのこと,地域での活動もあれば行政で働く人もいる.起業をする人も増えた.それに伴い,理論的枠組みの発展や領域知識,知見の進歩もめざましい.書店には理学療法に関連する多くの本が並び,インターネット上には情報が溢れる.その点では,25年前とは比較にならないほど充実している.
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