Close-up 取り組もう 末梢性顔面神経麻痺
末梢性顔面神経麻痺の診断と治療
古川 孝俊
1,2
Takatoshi FURUKAWA
1,2
1山形県立新庄病院耳鼻咽喉科
2山形大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科
キーワード:
末梢性顔面神経麻痺
,
Bell麻痺
,
Hunt症候群
,
検査
,
治療
Keyword:
末梢性顔面神経麻痺
,
Bell麻痺
,
Hunt症候群
,
検査
,
治療
pp.1456-1462
発行日 2022年12月15日
Published Date 2022/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202884
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
顔面神経の解剖と機能
第7脳神経である顔面神経は機能の異なるいくつかの神経線維から構成される混合神経で,主体となる顔面の運動神経以外に,涙腺・顎下腺・舌下線の分泌副交感神経および軟口蓋・舌前2/3の味覚を感知する味覚神経が混ざった神経である(図1).顔面神経は小脳橋角部で脳から出て,聴神経とともに側頭骨の内耳道に入る.顔面神経は側頭骨に入った後,顔面神経管(fallopian canal)と呼ばれる骨のトンネルの中を走行し,膝神経節で後方へ走行を変えつつ,大錐体神経を分枝する.大錐体神経は涙腺の分泌と軟口蓋の味覚を支配する.走行を変えた顔面神経はその後,アブミ骨筋を収縮させるアブミ骨筋神経を分枝し,顔面神経管の出口である茎乳突孔近くで鼓索神経を分枝する.鼓索神経は舌神経と合流した後,舌前2/3の味覚と顎下腺・舌下線の分泌を支配する.茎乳突孔から顔面神経が出ると耳下腺の中で枝分かれし,側頭枝,頬骨枝,頬筋枝,下顎縁枝,頸枝に分かれ,最終的に10種類以上の顔面表情筋の運動を支配する.
顔面神経は顔面神経管の中で多くの神経線維が密集して走行しているため,高度の障害を受けた場合,神経再生の段階で隣の神経線維と過誤支配を引き起こしやすい特徴がある.その結果,口輪筋を動かす神経線維と眼輪筋を動かす神経線維との間に過誤支配が生じ,口運動と同時に閉眼が起こり,閉眼と同時に口運動が起こるという病的共同運動が生じる.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.