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はじめに
「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」1)(中央教育審議会)で書かれていることを医療者教育の立場から考えてみることにする.2040年に必要とされる人材として,「予測不可能な時代の到来を見据えた場合,専攻分野についての専門性を有するだけではなく,思考力,判断力,俯瞰力,表現力の基盤の上に,幅広い教養を身に付け,高い公共性・倫理性を保持しつつ,時代の変化に合わせて積極的に社会を支え,論理的思考力を持って社会を改善していく資質を有する人材」を挙げている.医療者教育における人文科学や社会科学の意義について考えてみる必要がある.
2040年を見据えた高等教育と社会の関係では,「大学は,教育と研究を一体不可分のものとして人材育成と研究活動を行っており,(中略)その活動が,現在の社会を支え,また未来の社会を創出するために貢献していくことは重要であり,(中略)高等教育は,我が国のみならず世界が抱える課題に教育と研究を通じて真摯に向き合い,新たな社会・経済システム等の提案をしていくこと,その成果を社会に還元することを通じて,社会からの評価と支援を得るという好循環を形成することにより」とある.このことは,地域における高等教育として,「地域の高等教育機関が高等教育という役割を超えて,地域社会の核となり,産業界や地方公共団体等とともに将来像の議論や具体的な連携・交流等の方策について議論する『地域連携プラットフォーム(仮称)』を構築することが必要である.各高等教育機関は地域の人材を育成し,地域の行政や産業を支える基盤である.これを十分に機能させていくためには,常に地域において何が必要とされているのか,地域に対して当該高等教育機関が何を提供できるのか,等の観点についての情報共有と連携が欠かせない」とつながり,専門学校を含む大学が地域・都道府県・国のレベルでのニーズを把握し,行政・産業・住民とともに協働して社会の課題に取り組む責任があることを強調している.
答申ではほかにも学修者本位の教育への転換,多様な価値観が集まるキャンパス,リカレント教育,教育の質保証などが論じられているが,本論考では医療者教育の視点から,「医療者教育における人文科学・社会科学の意義」と「専門学校・大学と社会—教育組織の社会貢献」を取り上げてみる.
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