書評
—井樋栄二(著)—「肩学—臨床の「なぜ」とその追究」
工藤 慎太郎
1
1森ノ宮医療大学
pp.575
発行日 2021年5月15日
Published Date 2021/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202312
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肩関節のリハビリテーションは難しい.夜寝ていると起きたくなるような痛み,投球という高速の全身の協調運動中に生じる痛みや原因がよくわからない可動域制限.いずれも日常臨床でよく遭遇し,臨床医や理学療法士,作業療法士の悩みの種となる.「なぜ? 痛いのか?」「なぜ? 挙がらないのか?」このような臨床的な問題に,30年以上,悩みながら臨床・研究を追究してきた井樋栄二先生の歩みが詰まっているのが,この『肩学—臨床の「なぜ」とその追究』である.自分自身の臨床での悩みを思い出しながらページをめくると,自身の忘れかけていた知識や思いもよらなかった知見に出合う.肩だけではなく全身を専門とする理学療法士の臨床の「なぜ?」に向き合い,よりよい治療を生み出したいと願う研究者として,本書の特徴を紹介させていただきたい.
「はじめに」では,井樋先生の肩学にかかわる歩みがまとめられている.リハビリテーションに関しては,上腕二頭筋長頭の機能や脱臼後の外旋位固定といった今では多くの人が知っているメカニズムや固定方法を井樋先生が生み出されたことと,そこに至る歩みを知ることができる.これは研究者として大変興味がそそられる内容であった.これまで当たり前に行われてきた内旋位固定をどうして外旋位で固定しようと考え始めたのか? これは新たな治療を生み出すために必要なエッセンスを感じることができた.
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