- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本の理学療法士教育は1963年に開始され,その養成校の名前は「国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院」でした.それに続いた養成校「九州リハビリテーション大学校」,そして「高知リハビリテーション学院」の名前からもわかるように,われわれ理学療法士はリハビリテーション医療の申し子として日本に誕生したのです.当時のことを思い起こすと,「新しい医療における新しい役割」という高揚感のある受け止め方をしていたと思います.
しかし,いざ理学療法士として就職してみると,臨床現場においては「リハビリテーション医療」と「理学療法士」という新しい職業を患者に理解してもらうことにたいへんな努力が必要でした.その最たるものがマッサージ行為との差別化でした.総合臨床実習中に医師から「肩をもんでくれ」とよく言われたものです.このような状況を変えるため,初期の理学療法士たちは懸命の努力をし,その努力によって理学療法士の本来業務に関する社会的評価が固定したものになっていきました.ところが最近の理学療法士はいたって簡単にマッサージを行うようになっており,2025年以降の姿を考えるときに大きな不安材料になっています.
1971年に厚生省(当時)によって示されたリハビリテーションと介護の強化が急務であるという方針のもと,リハビリテーション医療の拡大という医療政策によって,医療機関を中心に理学療法士の雇用は増え続けてきました.また,介護保険の導入と在宅医療の拡大は理学療法士の働き方を大きく変化させ,在宅理学療法は日本の医療・介護保険体制のなかで欠かせないアイテムになってきました.
本稿で,2025年以降の理学療法士の姿を描くにあたり,私は理学療法士にとって大事なことは,総人口や高齢者数が激減し始める2040年以前と以降を分けて考えることだと思います.加えて,これまでの理学療法士業務の歩みを顧みて,反省すべき点は反省し,それを未来に活かすことも重要な点と考えています.これまでの理学療法士業務の変化を捉えながら,さまざまな情報をもとに2025年以降について記述します.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.