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はじめに
1999年に米国科学アカデミーの分科会であるInstitute of Medicine(IOM)1)から米国大統領宛の報告書『To Err Is Human』(「過ちは人の常,許すは神の業」の前半分を利用した題名)が公表され,医療事故をシステムエラーとして捉える考え方が世界的に一般化した.日本においても,2002年4月に厚生労働省2)から「医療安全推進総合対策—医療事故を未然に防止するために」が発表されて以来,各医療施設においては年2回の職員研修が義務づけられるようになった.その後医療安全をどのように教育するかについては,世界的にもしばらく模索が続けられ,2011年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)3)が『WHO患者安全カリキュラムガイド多職種版』(図1)を公表し,医療安全は医療者が習得すべき知識として初めて体系化された.本書は翌年に日本語版が作成され,WHOあるいは東京医科大学医学教育学分野のウェブサイトから無料ダウンロードが可能となっている.
一方で,リハビリテーション領域では,時を同じくして,急性期から回復期・維持期へと対象が拡大され,その活動も集中治療部から通院外来や在宅へと広がり,その内容も運動器疾患にとどまらず摂食機能,廃用症候群,心大血管疾患,リンパ浮腫など,多様な状態に応じたリハビリテーションが進められるようになった.医療安全も当然のことながら急性期・回復期・維持期すべてを対象とすべきであるが,現時点では急性期から回復期までしかカバーできていない状況である.本稿では,急速に拡大するリハビリテーション領域に対して,『WHO患者安全カリキュラムガイド多職種版』をもとに,医療安全の現況を概説したい.
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