特集 多分野に広がる理学療法
Human centric scienceに基づいたスポーツ用品開発
波多野 元貴
1
,
高島 慎吾
1
,
大塚 直輝
1
,
角 奈那子
1
Genki Hatano
1
1株式会社アシックススポーツ工学研究所
キーワード:
スポーツ用品
,
理学療法
,
シューズ設計
,
ウエア設計
,
人体応答
Keyword:
スポーツ用品
,
理学療法
,
シューズ設計
,
ウエア設計
,
人体応答
pp.989-992
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201031
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はじめに
近年,スポーツを楽しむ方の人口は,世界的に増加の一途をたどっており,その目的は,競技力向上のみならず,健康増進や社会活動への参加など,さまざまなケースが散見するようになってきた1).このように多様化したユーザーが使用するスポーツ用品の開発においては,さまざまなニーズに応えるために人体の特性や使用者の視点を念頭に置いた「human centric science」による研究が重要となる.
具体的には,さまざまな動作やシーンにおける人体応答の分析をもとに要求機能を抽出し,それらの機能を満たすために独自に開発した材料の活用や構造設計を実施する.なかでも,動作分析においては,人体応答を考慮した適切な要求機能抽出のために運動学や解剖学,生理学などを含む理学療法の観点からの考察が重要な要素の一つと言える.
現在,筆者らの研究グループには5名の理学療法士が在籍しており,各種スポーツ用品のコンセプト立案,構造設計,機能性評価手法の確立などの側面から研究開発を行っている.いずれも理学療法学を大学・大学院にて学んだ後,その技術や知識を医療のみならずモノづくりにも役立てることで,カテゴリーを問わずスポーツを楽しむ方のQOL向上に貢献したいとの考えから,現職に至っている.
本稿では,理学療法分野の知見を活用したスポーツ用品の研究開発事例として,下肢の挙動特性に着目したランニングシューズ設計およびシミュレーション技術を活用した野球ウエア設計について述べる.
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