臨床実習サブノート 歩行のみかた・7
小脳出血
芝崎 淳
1
Jun Shibasaki
1
1社会医療法人将道会総合南東北病院リハビリテーション科
pp.921-929
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201010
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はじめに
歩行は,ヒトがある地点からある地点まで移動するための手段であり,日常生活を遂行するための基本的な動作の一つです.また,歩行と健康に関する研究は広く実施されており,歩行は体力保持・増進,健康の維持さらには死亡率にも影響するとされています.脳卒中後遺症者においても,歩行速度が市中在住脳卒中者の歩行自立度の予測因子である1)ことや,歩行速度が速いほど生活範囲が拡大する2)ことが報告され,歩行機能が日常生活活動(ADL)や手段的日常生活活動(instrumental activities of daily living:IADL)に影響を及ぼすことが示唆されています.
「脳卒中治療ガイドライン2015」3)においても,不動・廃用症候群を予防するため,十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められており(グレードA),歩行や歩行に関連する下肢トレーニングの量を多くすることが,歩行能力の改善のために強く勧められています(グレードA).
脳卒中後遺症者の歩行障害は随意運動の障害による片麻痺歩行が多数を占めます.ほかに,多発性脳梗塞でみられるような小刻み歩行や,小脳病変でみられる失調性歩行などがあります.
「歩行のみかた」,今回のテーマは小脳出血です.小脳出血後遺症としての歩行障害は,失調性歩行ですが,失調性歩行は小脳とひと口に言っても損傷を受けた場所によりその種類が異なります.そのため,小脳の構造や機能,歩行障害の発生メカニズムを理解しておくことで必要な評価や適切な治療の選択が可能になります.
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