特集2 これまでの10年とこれからの10年—理学療法の発展と課題と夢
関節疾患の理学療法
木藤 伸宏
1
Nobuhiro Kito
1
1広島国際大学総合リハビリテーション学部
キーワード:
理学療法
,
専門性
,
運動・身体活動修飾性治療
Keyword:
理学療法
,
専門性
,
運動・身体活動修飾性治療
pp.32-34
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200436
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日本において,これまでの10年間に関節疾患に対する理学療法士への関心は高まり,さまざまな治療概念が提唱されてきた.そのこと自体は関節疾患にかかわる理学療法士の視野を広げプラスに作用したことも多いが,マイナス面として,柔道整復師,マッサージ師,トレーナー,ピラティス,ヨガ,ロルフィングを行うbody workerと理学療法士の専門性の違いをあやふやにしたのではないだろうか.上記の施術概念や技術の一部を理学療法に取り入れることについて問題はないと思っている.しかし,取り入れるにしても理学療法というフィロソフィーがなければ,われわれのアイデンティティー自体があやふやになる.この10年間はまさに理学療法というフィロソフィーを見失い闇雲に走り続けた結果,われわれのアイデンティティーが失われた時代であり,それが今も続いて深刻な問題に発展していると筆者は思っている.この結果が診療報酬に反映され,厚生労働省において理学療法士と作業療法士を一緒にした新たなリハビリテーション専門士確立に向けた議論へと発展したのではないだろうか.
Vosら1)によると,筋骨格疾患と障害は障害調整生命年数(disability-adjusted life years:DALYs)の上位を占め,能力障害(disability)の原因として2010年は1990年より45%上昇した2).これらの疾患や障害を持つ人々に対して,われわれ理学療法士も重要な役割を任う.そのためには,われわれが誰のどのような問題に対して何を提供できるのかという専門性(profession)を明確にし,国民に広く認知される必要がある.
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