1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?
gegenhalten(=paratony)—認知症患者の不可思議な抵抗
金谷 さとみ
1
1菅間記念病院
pp.1115
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200410
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●現象と神経学的所見
最も身近な文献1)によれば「患者の注意がほかに向けられていると筋の抵抗はないが,“楽にして”などと指示されて,検査を意識すると受動運動に対し無意識に力が入る現象をいう.また四肢を急速に受動的に動かすと抵抗が増加し,ゆっくり動かすと抵抗は少ない」とある.アルツハイマー病やレビー小体型認知症などの一般的な認知症の進行期にみられることがあり,前頭側頭型認知症やクロイツフェルト・ヤコブ病の進行期など,あらゆる原因で前頭葉の重篤な損傷に陥った際に出現し,これらの疾患プロセスの重症度,疾患の終末期の段階などを判断する指標に使うこともある.
筋トーヌスのなかではrigidityに分類される筋緊張異常の名称で,paratony(-nia)とも呼ばれている.主に前頭葉の大脳皮質機能低下を来している認知症患者の神経学所見として,gegenhaltenのほかに,動作時に出現しやすい前頭葉特有の病的反射(把握反射,吸引反射,うなじ反射など)にも留意しなければならない.そのうえ,動作維持困難,保続なども出現し,これらの現象が複雑に絡み合い,日常のさまざまな動作,理学療法の実施を困難にする.
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