2頁の知識
感染と抵抗
淸水 文彦
1
1東京醫齒大
pp.20-21
発行日 1951年6月15日
Published Date 1951/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906870
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人間の身體は各器官の殆ど神秘的——非科學的とわらわれるかも知れないが—と云つてもよい位の微妙な協調によつて生理的槻能を遂行している。そしてまたその状態を保たうとしている。このことがそのまゝその協調を破ろうとするもの或は破れた場合に對應する處置ともなつている。即引きのばされたゴムテープが常に自分の正常の状態に戻ろうとしているのと同じ樣に病氣になるまいなつたらなおろうとする抵抗力となつているのである。しかしその機能には一定の限度があるのでその協調を破ろうとする作用があまり強力であれば如何ともしがたくなるのであるが,これも條件によつては段々と普通には見られなかつた樣な機能が發揮されて行く適應と云う現象も見られる。人工的いろいろの機能の増進を計る鍛錬と云うこともなりたつし,1つの機能が犯されゝばそれにかわるもので補おうとする力もある。これらのことが集つて一般的或は個人的に正常な人間の病氣に對する抵抗が形づくられているとすると,編集者から與えられた「病氣と抵抗」と云う題目はあまりにも廣く且むずかしく私にはとつても手がつけられない。そこではつきりと身體の中で起るこれらの病因作用や外から加えられるものでも外傷とか中毒とかを除いて比較的特殊な立場の病原微生物によつてひきおこされる感染とそれに對する抵抗とに限らしていたゞいたことをおゆるしねがいたい。
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