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発達障害児の対応は理学療法士にとっては苦手な領域ではないだろうか.私はNICUでの仕事,およびフォローアップに本格的にかかわり10年が経過した.ここ数年,外来リターン組の多くは多動や不器用,言語発達の遅れを示すような発達障害児であり,時代とともに避けて通れない領域になったと痛感している.しかしながら,私自身,発達障害児とそのご家族のQOLに十分貢献できた手応えが少なく,困難な領域であることも感じていた.困難な領域に向かうには,優秀なガイドが必要であろう.そんな折にこの本に出会った.
本書は,コミュニケーション障害を主徴とする発達障害児に対する身体特性の評価と運動療法介入を解説したものである.著者は本書の冒頭で発達障害児の歴史的変遷,自閉症,アスペルガー症候群,広汎性発達障害,注意欠陥・多動性障害,学習障害の心身の特性を記したうえで,発達障害児全般の身体機能に言及している.正常な中枢神経の成熟には,経過とともに組織化される感覚と運動の密接な関連が不可欠であるが,その要素を切り離すことなく発達障害児のさまざまな特性を「発達の障害,遅れ,偏り」として捉え,その基盤には定型的な発達とは異なる非定型的な認知・行動パターンが存在することを示唆している.評価のなかでは,全般的な感覚のモニタリングを独自の方法でスクリーニングし,姿勢のコントロールや協調運動,各要素の集大成となる運動イメージを確認したうえで,治療計画を立案する.また治療に関しても,その中心は運動であるが,体性感覚の及ぼす作用を常に意識しており,理学療法士的な視座に立ったなじみやすい内容である.運動種目の説明に写真が多用されている点も本書の特徴であり,これもまた正確な理解と実践の助けになる.
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