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大学教員になって25年が経過した.教員になった当初,どのくらい教育ができるか不安があったが,自分なりに一生懸命努力してきた.どのように努力してきたかを具体的に述べることは難しいが,とにかく,頑張っている自分の姿を熱く語ってきたように思う.まず理学療法士としては,理学療法で患者さんの症状が改善した様子を解剖学的,運動学的,生理学的に解釈して解説してきた.研究者としては,筋電図研究の成果を語ることで,研究の必要性や重要性を伝えてきた.そして,医療人として,大人として,大切なことを熱く語ってきた.学生を自分の子供のように思い,熱く語ってきただけである.
私が今,教員として頑張ることができている背景には,恩師である藤原哲司先生(京都大学名誉教授)の影響が大きい.先生は神経内科医で,日本の筋電図研究の先駆け的な存在であった.授業を聴くだけで,患者さんへの思いが深い,すごい神経内科医であることが想像できた.とにかく紳士で,学生には常に優しく温かく接してくださった.しかし,怒らせたら怖い先生であった.その先生に,研究者として直接教えを請うことになったのは,卒業後である.神経疾患の理学療法に興味を抱いた私は,1年目から多くの神経疾患患者さんを担当していたが,理学療法で改善がみられても,理学療法前後の反応の変化を客観的に把握できないことにジレンマを感じていた.そのとき,勤務先の神経内科医から筋電図を用いた研究の有用性を教えてもらったことから,母校の助手になり,藤原先生に研究指導を受けることになった.先生の研究指導についていけるか心配だったが,それは杞憂であった.当時の先生は私の何十倍もの仕事をされており,背中で研究の何たるかを見せてくださった.先生の教えは非常に厳しかったが,私がくじけそうになるときには父親のように愛情を注いで指導してくださった.この熱いご指導があったからこそ,今まで研究を続けてこられたのだと思う.本当に感謝している.
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