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はじめに—特別支援教育とICF
障害のある幼児児童生徒にとって,自立や社会参加は重要な目的である1).この目的を達成するためには,教育のみならず,福祉,医療,労働などのさまざまな側面からの取り組みが必要である.このため,特別支援教育では関係機関との連携を重視している.理学療法士は,その一翼を担っている.
特別支援教育において行われる指導および支援は,障害のある幼児児童生徒の一人ひとりのニーズを正確に把握して行うことを旨としている.特別支援学校の目的の一つとして,「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること」がある2).自立や社会参加に向けて,生活や学習上の困難に対して適切な指導および必要な支援を行うために,教育的ニーズの内容は,個別の教育支援計画3)のなかに盛り込まれるようになっている.教育的ニーズの把握に基づいて,教育的支援の目標と基本的な指導内容が明確にされる.さらに保護者を含め,教育的支援を行う者および関係機関とその役割の具体化が図られる.特別支援教育は,このような内容を明記した個別の教育支援計画を作成することにより,教育的ニーズに対する適切な対応を図っている.
特別支援教育における国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health:ICF)4)の活用については,学習指導要領の解説のなかで述べられている.学習指導要領とは,学校における教育課程を編成する際の基準を示したものであり,文部科学省によって定められているものである5).特別支援学校学習指導要領解説自立活動編のなかでは,国際障害分類(International Classification of Impairments,Disabilities and Handicaps:ICIDH)からICFへの障害の捉え方の変化に言及したうえで,「『障害による学習上又は生活上の困難』は,WHO(World Health Organization)において,ICFが採択されたことにより,それとの関連で捉えることが必要である」と述べられている6).特別支援教育では,指導・支援に取り組むにあたり,ICFにより障害をとらえようとしている.
また,特別支援学校学習指導要領解説総則等編のなかでは,「個々の教育的ニーズに応じて連携する相手や内容・方法等を工夫することが大切である.その際,関係者間で個々の児童生徒の実態等を的確に把握したり,共通に理解できるようにするため国際生活機能分類(ICF)の考え方を参考にすることも有効である」と述べられている7).これに示されるように,特別支援教育はICFの共通言語としての役割にも着目し,多職種連携のために活用しようとしている.
特別支援学校に在籍する子どもを担当する理学療法士にとって,特別支援教育との連携が大切であることはいうまでもない.特別支援教育においてICFの活用が図られている今日,理学療法を進めていくうえで,特別支援教育との連携はより一層意義深いものとなっていくと考えられる.本稿では,特別支援教育におけるICF-児童版(Children & Youth Version:CY)8)の活用方法について具体的な症例を挙げて示し,特別支援教育におけるICF-CYの活用が理学療法にもたらす効果について,家族への説明,チームの理解,帰結の向上の視点から述べる.また,特別支援教育における多職種連携のなかで理学療法士がICF-CYを活用する長所について,医療・福祉連携の視点を含めて述べる.
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