特集 慢性腎臓病と理学療法
腎臓疾患患者に対する理学療法の実際
1.保存期慢性腎臓病(CKD)患者に対する理学療法
樋口 謙次
1
Kenji Higuchi
1
1東京慈恵会医科大学附属柏病院リハビリテーション科
キーワード:
保存期CKD
,
身体活動
,
QOL
,
運動処方
,
運動療法
Keyword:
保存期CKD
,
身体活動
,
QOL
,
運動処方
,
運動療法
pp.707-712
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106718
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はじめに
慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,2002年に米国でその概念が提唱され,本邦におけるCKD患者は1,330万人と推定されている1).これは成人の8人に1人がCKD患者であることを示しており,国民病と言っても過言ではない.そのなかで,わが国における人工透析患者数は2011年12月で約30万人を突破し,さらなる患者数の増加が見込まれている.その自己負担費用は,自立支援医療制度により月額2万円以下(所得に準ずる)であるため,そのほとんどが公費にて負担されており,その額は年間約1兆円以上と報告されている2).2010年度の統計によると国民全体の医療費は約37兆円であるため3),医療経済学的に考えても透析患者の増加を抑えることは急務である.さらに,CKD患者は透析に至る前に脳卒中や心筋梗塞などの心血管病変(cardiovascular disease:CVD)を発症するリスクが高く,死亡に至る割合も高い4).
この現状を考えると,生活習慣病の予防が昨今取り上げられるなか,CKDも同様に増悪予防の取り組みが必要と考えられる疾患と言える.
本稿では,このような透析に至る前のCKD患者を保存期と捉え,保存期CKD患者に対して理学療法士ができる理学療法について,その可能性も含め解説する.
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