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はじめに
日本に正規に理学療法が導入されたのは,1965年に「理学療法士及び作業療法士法」(以下,法律)が制定されたときである.それ以前には,医療類似行為者などが理学療法従事者として主な医療施設などで勤務していた.しかし,理学療法学教育を通じて理学療法士を育成することの必要性が認められ,1963年に国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院が設置され,その第1回生の卒業年度に合わせて法律が制定された.だが,理学療法従事者の方々が所属する団体からの要請があり,国は特例措置として,一定の基準を満たした方々の国家試験受験を1974年まで認めていた.
その後,日本の高齢社会の到来に比例して理学療法学教育施設が急増し,現在では大学院課程を有する大学も実現するなど,「理学療法の知」は顕著に進展してきた.一方,理学療法士の国家試験の一環として,当初は口頭試問が含まれていたが,受験生が増えてきたことからこれを実施することが物理的に困難となり,1970年代後半に廃止された.国家試験で口頭試問が廃止されたのは,理学療法士のみではなく,他の医療関連職種についても同様である.
理学療法士の国家試験に口頭試問が含まれていたころ,受験者は,知識はもとより実技の習得にも相当の時間を費やしていたが,廃止後には,幾分「理学療法の技」が軽視されてきたような印象を受ける.筆者は,理学療法士国家試験委員を歴任した経験と長年理学療法学教育に携わってきた者として,理学療法士の「知と技」の融合とバランスとを担保することの重要性を感じている.よって,本論では,人間の知を基盤にした実学としての理学療法(学)の知と技の融合とバランスについて論じてみたい.
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