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はじめに
2011年3月11日,三陸沖で発生した東北地方太平洋沖地震により最大震度7の強い揺れと国内観測史上最大の津波を伴い,東北・関東地方を中心とする広い範囲に甚大な被害をもたらした.また,東京電力福島第一原子力発電所が被災し,放射性物質が漏れ出す深刻な事態になった.これを受け,2011年12月に東日本大震災復興特別区域法が成立し,そのなかに「訪問リハビリテーション事業所整備推進事業」が位置づけられた.
被災地では,特に災害弱者と言われている障害者や高齢者が,仮設住宅やこれまでとは違った地域環境のなかでの生活を強いられることとなったと同時に,限られた医療機関等の資源も災害により失われた.さらに,福島県においては津波被害に加え,原子力発電所からの放射能漏れの影響もあり,子供たちや働き手が他の地域に避難を余儀なくされた.その結果,地域における高齢化率が一気に高まり,医療機関の稼働可能ベッド数が低くなるという,まさに,これからの日本の高齢化社会の進展の縮図のような状況となった.
このような状況下,日本理学療法士協会ではいち早く被災県の県士会長を招集し,対応を検討した.その結果,被災地の復興を第一義として,訪問リハビリテーション事業所の設置を積極的に推進していくこととなった.さらに,今後の日本の高齢社会の進展に対応し得る訪問リハビリテーション事業所の在り方を模索し,日本の仕組みにおいて過去になかった,病院・診療所・老人保健施設以外の法人が経営する事業所運営が適正になされることを実証することが重要である.その結果として,全国の標準サービスとしての訪問リハビリステーションが認められ,地域のリハビリテーションニーズに対し,必要な人に,必要なとき,必要な量のリハビリテーションサービスを提供できることを視野に入れ,活動を始めている.
本稿では,その背景やこれまでの経過とともに,実際の訪問リハビリテーション事業所における活動を紹介し,今後の訪問リハビリステーションの在り方について考えてみたい.
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