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はじめに
本稿は当初,「広汎性発達障害児の理学療法と生活指導」というテーマで依頼を受けた.広汎性発達障害(pervasive developmental disorders:PDD)は,コミュニケーション能力や対人関係・社会性の獲得に問題を呈する疾患で,世界保健機関(World Health Organization:WHO)が定めた「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(第10版)」(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems:ICD-10)と米国精神医学会が刊行した「精神疾患の分類と診断の手引(第4版新訂版)」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM-Ⅳ-TR)が診断基準として広く用いられている1).ICD-10とDSM-Ⅳ-TRでは下位項目や診断基準に違いがみられる(表1~3)が,わが国においては発達障害者支援法(2004年)および改正学校教育法(2006年)を受け,2007年の文部科学省による初等中等教育局特別支援教育課名の通達により特別支援教育の対象となったことから広く知られるようになっている(図1)2).
ところが,2013年に公表されたDSM-5(この版からはローマ数字からアラビア数字に変更されている)では,PDDが自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)に変更されている3).しかも単なる名称の変更にとどまらず,その枠組みが大きく異なっている.変更の詳細は後述するが,今後改訂されるICD-11も筆者がベータ版を確認した限りでは同じ方向性を持っていると思われる.これらの診断基準の変更がわが国の行政にどのように反映されるかは現時点ではわからないが,現在が大きな転換点にあることを踏まえ,本稿のテーマを変更させていただいた.
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