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はじめに
米国において,現在年間50万人以上に人工膝関節置換術(total knee plasty:TKA)が施行され,2030年には300万人以上に増加するという試算がある1).本邦でも年々増加の一途をたどっており,2011年現在で,年間7万人を超えている.このように,人工膝関節置換術は決して珍しい手術ではなく,比較的ありふれた手術となっている.
一方で,理学療法の現場においては,病院によって,または執刀する医師によっても治療方針は一見バラバラで,やや混乱しているという印象がある.例えば,術後に膝をついたまま移動する(いざる)という動作を許可するか否か,各病院で方針は異なっている.当院では,ほとんどの患者さんに術後膝をついていざってもよいと指導しているが,場合によっては積極的に膝つきをしないように指導することもある.このような理学療法上の違いはどこから来るかと言うと,使用したインプラントが違うからである.この点を理学療法士にきちんと説明して指導することは非常に大切である.本稿では,理学療法を実施するうえで知っておくべき人工膝関節の基本的な知識について述べる.
さて,2000年代に入ると,最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)という概念が人工関節手術においても導入された.当初,低侵襲手術により,術後疼痛の軽減,入院日数の短縮化,これによる医療コストの削減などが期待され,多くの施設で導入された.人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)の分野では,MISは一定の成功を収めたが2),TKAの分野ではその効果は期待されたほどではなかった.
一方,2012年現在,全国の人工膝関節症例数の1割を超える程度と数は少ないものの,人工膝単顆置換術(unicompartmental knee arthroplasty:UKA)は真のMISとして見直され,注目されている.実際,術後疼痛は軽く,術後の機能回復は極めて早いため,当院では積極的にこの手術を行っている.徐々にではあるが全国的に症例数は増えつつあるため,膝の低侵襲手術としてUKAを紹介する.
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