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足部と歩行に関するバイオメカニクス的研究
光学的な手法を用いた生体による運動解析では,被験者に配置された皮膚上マーカーの空間座標上の位置座標から計算により身体の動きの分析を行う.この手法の長所として,低侵襲にダイナミックな動作計測が可能であることなどが挙げられる.足部に関する研究も散見され1~3),下腿・後足部・前足部・足趾などが運動のつながり(運動連鎖)として確認できるようになったようにもみえる.しかし,骨運動が少なく,複雑な足部内の関節運動を皮膚上マーカーによりとらえることの限界も指摘されており4),計測技術が詳細を十分にとらえる状況には到達していない.近年,足部内運動の解析方法として生体に直接ピンを挿入し動作を行う方法5,6)や,fluoroscopyに代表される直視下に足部内の骨運動をとらえる研究7,8)が行われており,動作時の足部内運動の理解がさらに進むことが期待される.
理学療法の臨床場面では,歩行時の足底筋膜の痛みであっても,立脚初期に後足部(踵骨隆起の内側突起)に痛みを訴えるケースや立脚後期に前足部(第1趾の基節骨,底側靱帯)に痛みを訴えるケースなどが存在する.痛みを訴える箇所や動作のタイミングもさまざまななかで,症例のメカニカルストレスを解釈し,治療を行っている.光学的な手法などではみることのできていない(追いついていない)領域であっても,知識・経験に培われた臨床家の技術やアイディアが疼痛軽減,パフォーマンス向上などの結果へと導いている.そこで今回は,臨床的な考え方と光学的な手法による科学的なデータを合わせた解釈を通じて,「アキレス腱炎,足底筋膜炎から見た歩行の運動連鎖」をテーマに考えたい.
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