特集 心理・精神領域の理学療法
身体精神合併症例の理学療法
仙波 浩幸
1
Hiroyuki Senba
1
1豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科
pp.109-117
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106195
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精神科理学療法の現状
精神科病院に勤務する理学療法士は,日本理学療法士協会会員調査で常勤66名22施設1),医療施設(動態)調査・病院報告で常勤換算156.7名となっている2).理学療法を実施している精神科病院は少なく,非常勤のスタッフに頼らざるを得ない少人数職場である.精神科病院は,一般科病院・病棟よりも施設基準や診療報酬は低い基準に据え置かれ,理学療法士以外のスタッフが運動療法を担う職場もあり,人手不足,物品不足で決して満足のいく職場環境ではない.患者の精神心理症状を深く理解し,丁寧な対応が求められる,きわめて人間性が問われる職場でもある.
精神科病院における理学療法の臨床は,高所からの飛び降り,鉄道への飛び込みなどシビアな受傷機転により多発骨折,脊髄損傷,下肢切断を呈した若年患者や,精神科に長年入院し大腿骨頸部骨折や変形性関節症,脳血管障害を発症した高齢患者などを対象としている.統合失調症や気分障害の精神疾患を併存し,精神科,一般科を問わず多様な疾患の合併,重複障害を有している.精神科病院に勤務する理学療法士は,重篤な身体障害と精神障害の両方に配慮した難しい症例を多く担当している.患者の精神心理症状に振り回され,EBM(evidence based medicine)ないしEBPT(evidence based physical therapy)とはほど遠い業務と感じながらも,関連文献を通読し,職場内外の研修等に参加しながら自己研鑽を積み,臨床に取り組んでいる.
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