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1.EBM(evidence based medicine)とどう向きあうか
格差社会の報道を聞かない日はない.経済,所得,消費,資産など様々な不均衡の状況を勝ち組,負け組と二分しての議論は功罪相半ばするが,論点を明確にするには便利である.結論から先に述べると,勝ち組理学療法士とは,EBMを利用して,三位一体の情報発信ができる者を示す.EBMは,ややもすると高価な測定機器を使用し,厳格で洗練された研究デザインでなければ無価値だという雰囲気であるが,そうは思わない.日常業務を遂行したことで自慢できること,あるいは繁忙な業務の苦労を客観的に分析することなど,日々精進し経験を積み重ねなければ発見しえない多くの知見,つまり,オリジナルな視点,仮説から得られるプレミアムな情報がはるかに重要である.
理学療法帰結(アウトカム)は,精神症状,どこの施設でどのような内容のインテンシブな治療をしたか,衣食住の状況,地域サービスの充実度やマンパワーなどの社会資源,家族支援状況が大きく影響する.ところが,精神障害や環境(治療する場所の質,社会資源,家族支援,QOLなど) が重要なパラメーターとして十分に取り扱われてきたであろうか.身体機能・障害のみならず,精神障害,環境を三位一体(図)で取り上げることができて有意義な帰結研究が成立すると考える.
小泉内閣から安倍内閣に政権交代した.安倍総理の言葉を拝借すると,理学療法士は,三位一体(身体障害,精神障害,環境)による情報発信ができ,「美しい職業理学療法士」(美しい国日本)を確立すべく,真の価値のある情報,研究成果の獲得に「闘う理学療法士」(闘う政治家)でありたい.今回は,与えられたテーマである精神障害について持論を展開したい.
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