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はじめに
常日頃からリーダーシップとは何であろうか,私にもっとリーダーシップがあればと自問することが多い.そして,50歳半ばでいまだに迷っているのが実態である.
歴史上,最も嫌われているかもしれないヒトラーは強いリーダーシップを発揮したと思う.その時期その環境でドイツ国民の圧倒的な支持を受けたことは事実なのである.しかし,ヒトラーにリーダーシップという言葉が似合わないのは彼が敗者であり正義がないためである.敗者にはリーダーシップの称号は贈られないことが多いようだ.現在,米国は世界のリーダーを自負し,自己の価値観を世界に押しつけている.平成13年に起こったニューヨークの貿易センタービルの大惨事は,多くの死者を出したことよりも世界のリーダーである米国のメンツが損なわれたことのほうが歴史的な意味は重い.小泉総理大臣は平成13年の4月に誕生し,当時の内閣支持率は驚異的で80%を超えていた.彼からは何かしらリーダーシップを感じさせる言葉と雰囲気が醸し出されていた.しかし,1年を経過した今日では支持率は大きく下落し,彼の言葉や雰囲気にリーダーシップを感じさせるものが薄れてきた.このように観てくるとリーダーシップという価値観は絶対的なものではなく相対的であり,短期的評価ではなく長期的評価であり,そして他者が勝手にリーダーに対して時々に使う暖昧なものと言わざるを得ない.リーダーシップについて様々なことが言えるが結局は勝者の論理のように思える.逆に言えば,勝っための方策がうまくいった場合にリーダーシップとして認められる.
現在,私には中間管理職としての限定的な責任しか委ねられていないし,それは資本主義社会における絶対的勝者ではないためである.また,限定的な責任におけるリーダーシップというものが存在し得るのであろうか.トップリーダーの路線を忠実に実践すること,あるいはトップリーダーの命令に柔順に従うことではリーダーシップとは言えない.そうだとすると,全国の理学療法士の中に真のリーダーシップとしての能力を持った人は幾人いるのであろうか.あるいは理学療法士にリーダーシップを発揮できる職場環境はあるのだろうかと思い悩む.
今回は日々悩んでいる立場からリーダーシップについて記述したい.
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