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1.はじめに
体性感覚誘発電位(Somatosensory Evoked Potentials;以下SEP)は生体における感覚神経機能を検索する方法であり,1947年,Dawsonがヒトの尺骨神経および外側膝窩神経を電気刺激し,重積法を用いて頭皮上よりその誘発電位を導出・記録することに成功し,その後1952年に電子計算機による加算平均法を用いてSEP内の小さな振幅の初期陽性電位を導出・記録することに成功したのが端緒とされる.それ以来,基礎的,臨床的研究が活発に行われるようになり,現在では各分野で広く神経機能的補助診断法として臨床応用されている.
この導出法は大きく2つの方法に分けることができる.1つは基準電極を手背,肩,膝などの頭部以外に設置する方法(遠隔電場電位,far-field potentials)と基準電極を耳朶,前額部等に設置する方法(近傍電場電位,near-field potentials)であり,前者は頭皮上の1個の記録電極から皮質下起源のより多くの場所からの電位を記録・導出することができるが,心電図や筋電図などが混入しやすいため安定した電位が得られにくい.一方,後者では,限られた部位からの導出になるが,より安定した電位の記録・導出が可能である.いずれも電極を体表面に設置することで非侵襲的に行うことが可能で,より安全な方法であるが,皮膚におけるインピーダンスの影響を受けるため前処置が必要であり,更には多くの加算回数が必要であることから,ある程度の測定時間を必要とする.
もう1つの導出法が,侵襲的方法である脊髄電位導出である.これは脊髄硬膜外腔に記録電極を設置・固定し,刺激電極を末梢神経および脊髄硬膜外腔等に設置して脊髄の上行性,下行性電位を導出・記録するもので,より鋭敏な波形の導出が可能である.しかも多くの加算を必要とせず,測定時間が短くてすみ,周囲の皮膚,皮下組織の電気抵抗を受けずに瞬時に導出できるので,主に脊椎・脊髄手術時のモニタリングや脊髄機能を評価するのに用いられている.
筆者は従来より,体表面導出法による体性感覚誘発電位を脳血管障害や脊椎・脊髄疾患等に対して行ってきた.本稿では,その導出手技およびデータの解釈などについて,自験例を提示しながら述べることにする.
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