特集 悪性腫瘍治療の進歩と理学療法
骨肉腫を有する患者の理学療法
山路 雄彦
1
,
内山 靖
1
,
篠崎 哲也
2
,
茂原 重雄
1
Yamaji Takehiko
1
1群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻
2群馬大学医学部整形外科
pp.709-715
発行日 2000年10月15日
Published Date 2000/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105639
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1.はじめに
骨肉腫は,発症率は比較的低いが,悪性骨腫瘍のなかでは最も頻度が高く,10代の男性の大腿骨遠位部や脛骨近位部に多く発生する.1960年代までの5年生存率は5~20%であった1-2)が,診断・治療技術の進歩により現在は60~70%程度3-4)になっている.この間,新しい手術方法も開発され,切断術から患肢温存術へと移行し,近年では患肢温存術が主流となってきている4-5).一方,切断術に伴う義肢もソケットや継手などのパーツの開発も進み,義足歩行も格段に進歩し,歩容の向上のみならず走行やスポーツ活動への参加が可能となっている6).しかし,骨肉腫自体の根治療法が確立していない現状では,生命予後と機能予後の双方を念頭においた治療を展開する必要がある.
そこで本稿では,最近の骨肉腫の治療方法と生命予後について広く概観した後に,近年盛んになってきた各種患肢温存術と切断術について理学療法の立場から比較を行う.その際,特に術後管理の方法や実際の筋力やADLの回復・獲得について,最終到達レベルとともに時間経過による獲得レベルと再発・予後とを対比させた考察を展開する.これらの点は患者のQOLを考えるうえで重要な要素で,ことに悪性疾患においては生命予後や時間因子を重視した機能獲得の過程を十分に配慮した治療計画が実践される必要がある.
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