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緒言
理学療法を行ううえでは,疼痛などの機能障害と関節に加わる力学的負荷の関係を理解することが重要である.関節に加わる力学的負荷には,曲げ,圧迫,牽引,回旋,剪断など1)があり,それらの負荷が骨や軟部組織に加わることで機能障害が生じる.治療者には,機能障害の発生原因を究明し,その原因に対して柔軟に対応する能力が必要であると考えられる2).
機能障害の発生原因を正しく把握するためには,動作観察が必須である.動作観察によりアライメントが分析でき,関節に加わる力学的負荷を予測することが可能となる.そのため,臨床現場では,肉眼的に観察できるアライメントの変化に応じて,力学的負荷を予測したうえで理学療法内容を検討し,効果を検証していくことが重要である.このプロセスは,治療者の主観的な予測に基づいて実施した治療を,治療者が主観的に評価するというものである.換言すれば,「仮説を仮説で証明していく」過程であり,治療効果が治療者の分析能力に依存するものであるため,科学性の高い作業とはいい難い.
筆者らは,骨関節疾患,特に下肢におけるスポーツ障害の病態把握において,動作分析所見と動作時の表面筋電図学的所見を総合的に判断して,理学療法評価や治療効果の判定に応用することを試みている3).表面筋電図の臨床応用では,記録や分析の方法を誤ると正確な理学療法評価が行えず,誤った理学療法の選択につながると考えられる.したがって,表面筋電図の臨床応用に際しては,筋電計や記録方法,解析方法に関する正しい知識を持つことが必要である.
本稿では,表面筋電図の分類,臨床応用に際しての注意点,表面筋電図解析から得られる情報について解説しながら,表面筋電図の臨床応用の実際について,変形性膝関節症患者を例に述べる.
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