特集 認知と理学療法
頭部外傷の認知機能と理学療法
大谷 武司
1
,
宮嶋 武
1
,
三沢 孝介
1
,
植西 一弘
1
,
原 拓也
1
,
鈴木 陽子
1
Ohtani Takeshi
1
1豊科赤十字病院リハビリテーション科
pp.328-334
発行日 2000年5月15日
Published Date 2000/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105545
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1.はじめに
頭部外傷(head injury)は,交通事故や高所からの転落などによる,頭部または全身への外部からの強力な打撃によって生じる.この強力な打撃により,脳挫傷,硬膜下血腫等の局所病変やびまん性軸索損傷が発症し,皮質および皮質下に広汎な損傷を与え,身体機能の低下や意識障害,重度の麻痺をきたす.
更に,骨折,血気胸等の多発外傷の合併,長期臥床による遷延性覚醒障害や沈下性あるいは嚥下性肺炎等が全身状態の悪化を招き,回復を遅延させる.また,慢性的な覚醒レベルの低下は認知障害を重度化させ,行動障害による社会的不適応の原因となる.
当院では,頭部外傷を負った患者に対し,早期歩行獲得を目的として,覚醒レベルの向上,廃用症候群の予防のために,可及的早期から離床および起立訓練を主体とした理学療法を施行している.しかし,歩行を獲得した症例のなかに,覚醒障害は改善したものの,認知障害が残存した症例がみられた.
そこで本稿では,前半で頭部外傷の覚醒・認知機能の障害像を中心に,これに関連する記憶障害,運動機能障害の特徴について,文献考察をしながら解説し,後半では,当院で早期理学療法を実施した場合の,①覚醒レベルの経時的変化と早期起座・起立直後の覚醒反応,②覚醒障害とその他の阻害因子が歩行獲得に及ぼす影響,③歩行獲得に要した日数,④歩行獲得症例の退院時のADL自立度に対する覚醒・認知障害等の影響について報告する.
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