とびら
臨床理学療法あれこれ
石橋 朝子
1
1札幌医科大学保健医療学部理学療法学科
pp.151
発行日 1998年3月15日
Published Date 1998/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105022
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患者さんを診るのが何よりも好きな私が臨床を離れて本学の前身である札幌医大衛生短大に赴任した当時,教員になったことが学生のためにも自分のためにも良かったのか,悪かったのか内心忸怩(じくじ)たる思いをむかし本誌の随想欄に寄せた記憶がある.あれから早いもので15年,お蔭様で本年は教職さいごの年を迎えてこの間を回顧するに俄然,結果は二重丸と自画自賛している.
振り返ると,教員になって2年ほどで私は再び臨床を模索しはじめた.縁あって内科医の紹介で週3回,1日おきに午後のひとときを大学病院の呼吸器科病棟で過ごすようになった.初めの患者さんは結核後遺症で寝たきりとなった方で,初回訪問時,教授総回診に出くわし,「私は呼吸器リハビリというものを全く理解しないが,この方をどうされますか」と教授に問われてしばし考え,「3年間かかって寝たきりにして下さいましたから,私も3年間かけて起こしてゆこうと思います」といったら,なみいる医師方がどっと吹き出した.以来,医師,ナースとのコンビネーションで大学病院での呼吸器リハビリは始まった.従来の医学教育には全くないカテゴリーなのに,乾いた砂が水を吸い込むような勢いで医局から全病棟へ,慢性期から急性期へ,そして全国規模の学術集会へと,主に医師たちにより波及していった.
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