巻頭言
摂食障害あれこれ
切池 信夫
1
1大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学
pp.702-703
発行日 2001年7月15日
Published Date 2001/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405905068
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摂食障害に取り組み始めてもう20年以上になる。産婦人科の先生が無月経を主訴として受診した若いやせた女性を「どうもプシやで」ということで当科に紹介されてきたのが最初のanorexia nervosa(神経性食思不振症)患者であった。それは精神科医になって約10年目の頃である。その頃,この病気について内科の教科書でやせこけて骸骨の標本もどきの写真が頭の隅にあったくらいで何の知識もなかった。しかし,今から考えると,この頃から日本でも摂食障害患者が増加しつつあった。
今では,神経性食思不振症は若い女性の1万人に1人か2人で欧米の1千人に1人から5人にと比べて低率であるが,神経性過食症は100人に1人か2人と欧米の若い女性の有病率とほぼ同じである。そして1990年代に入り,非西洋諸国であるエジプト,ジンバブエ,ナイジェリア,インド,香港などの女子高校生や大学生の間でもやせ願望や肥満嫌悪が欧米の若い女性と同様に高率にみられることや,米国や英国の少数民族の若い女性の間でもやせ願望や肥満嫌悪が浸透し,摂食障害患者が増加しつつあるという。
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