特集 関連領域―腎障害と運動療法
透析患者の合併症状と運動療法
田中 宏志
1
,
平方 秀樹
2
Tanaka Hiroshi
1
1九州大学医学部第2内科
2九州大学医学部腎疾患治療部
pp.476-481
発行日 1997年7月15日
Published Date 1997/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104812
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1.はじめに
日本透析医学会の集計1)によれば,我が国の慢性透析患者は1995年末現在で15万人を越え,糖尿病,高齢者と長期透析例の増加が著しい.導入患者の平均年齢は61歳(全例では58歳)と高齢で,導入患者の31%を糖尿病が占める.また,透析期間が10年以上の患者の比率は23%である.主要な死因は,心不全,脳血管障害,感染症,悪性腫瘍,心筋梗塞,悪液質などである.患者の95%は血液透析患者であり,持続携行式腹膜灌流(CAPD)や家庭血液透析の普及率は極めて低い.
慢性透析患者の運動療法は,患者のQOLを向上させ社会参加を促すことを最大の目的とする.しかし,高齢化,糖尿病例の増加,長期透析例の増加,心血管系合併症,透析アミロイドーシスを代表とする運動器障害は社会復帰を阻害する重大な要因となっている.唯一,腎性貧血に対してはエリスロポエチン(rHuEPO)が臨床に応用されて約10年が経過し,90%以上の患者で有効で,貧血是正に伴う精神心理学的症候や運動能力の改善が報告されている.
本稿では,慢性透析患者の骨・関節合併症を除く主要な合併症にふれ運動療法の意義について概説する.
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