特集 高次脳機能障害をもつ患者の理学療法
脳卒中患者の抑うつ状態と動作能力との関係
奥田 英隆
1
,
岩月 宏泰
2
Okuda Hidetaka
1
1岐阜県立岐阜病院リハビリテーション科
2名古屋大学医療技術短期大学部理学療法学科
pp.614-618
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104594
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1.はじめに
脳血管障害患者に対する理学療法として,われわれは種々の神経症状に重点を置き,様々な研究を重ねてきた.しかし,後遺症としての神経症候の他に,脳血管性痴呆や抑うつ状態などの精神症候の出現が注目されている.これら種々の精神症候は,理学療法を進めていく上で阻害因子となるばかりでなく,家庭や社会への復帰を困難にさせる.日頃,臨床の場面でこのような抑うつ状態に陥り,リハビリテーションの進行を阻害している患者をよくみかける.術遺症が軽度でも気分が沈む者もいれば,対照的に後遺症が重度でも車椅子生活で明るく暮らす者もある.このような現象がなぜ起こるのだろうか.
本疾患による抑うつ状態発現には脳器質障害,環境因子,障害受容までの葛藤1-6),種々の因子が複合的に関与することが推測される.この精神症候は身体障害と関連することが指摘されているが7),動作能力との関連を検討した報告は少ない,われわれは本疾患の抑うつ状態を評価し,動作能力として日常生活活動(ADL),歩行能力との関連について調査した.さらに,家族や復職など社会環境との関連についても検索した.
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