プログレス
培養皮膚の臨床応用
熊谷 憲夫
1
1聖マリアンナ医科大学形成外科
pp.49
発行日 1996年1月15日
Published Date 1996/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104461
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厚さ0.2mmにすぎない表皮により生体内部は守られ生命が維持されている.体の広範囲に熱傷を受傷するとこの機能が損われ,死に瀕する.熱傷創がすみやかに表皮でカバーされれば生命の危機を脱するが,創面を閉鎖できるだけの皮膚,すなわち表皮が残っていないと治療は難しく死亡率も高い.ところが,Greenら(1975年)の研究により表皮細胞を培養すると,切手大の皮膚から1か月で全身を覆えるだけの培養皮膚(表皮)を移植できるようになった.数層から10層程度の表皮細胞から構成された表皮シートを自家移植すると創面は上皮化・治癒する.1981年以降,主として重症の熱傷患者の治療に使用され,体表面の90%以上を受傷した患者の救命例も多数報告されている.同種培養表皮移植についても臨床応用が進んでいる.Viabilityのある表皮細胞から産生される種々のサイトカインにより,従来の創傷被覆材にはみない創傷治癒促進効果が認められ,将来性のある素材として注目されている.著者の施設では,1985年に本邦で初めて培養表皮移植に成功し,その後,広範囲熱傷,熱傷瘢痕,アザ,刺青,皮膚科疾患,潰瘍など計260症例以上に自家ないしは同種培養表皮移植術を行ってきた.
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