綜説
遺伝学に応用された組織培養法についての検討
堀川 正克
1
1大阪大学理学部遺伝学教室
pp.354-364
発行日 1958年12月15日
Published Date 1958/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906045
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§1.序言
生物体から生きた組織器官ないしは細胞を取り出して生体外で適当な栄養物を与えながら硝子器の中で生存増殖せしめる手段が組織培養法であつてこれらについては数多くの研究が多数の人々によつて行われて来た。
このような組織培養法は単に自然状態に於て生物体内で行なわれる組織器官の分化や増殖或いは細胞分裂の機構を解明する手段としてのみならず種々の培養条件に対する組織や細胞の反応性を調べて生物体内の物質代謝の一面を知り,ひいては生命現象の謎を解く最も有効な手段の一つとしても生物学者や医学者にとつて最も魅力的な研究方法であると言えよう。例えば諸種の生活現象が複雑に交錯している生体内に於ては一つの因子の変化が連鎖的に他の多くの因子の変化を惹起する事はむしろ通常の事であつて正確な観察を行う上にしばしば困難をきたす事がある。この点最近の組織培養法の進歩によつてこれらの点は或る程度に規制され,単に操作が便であるというのみならず実験化学に取つて最大の目標たる定性定量分析と言う見地からも利点を有するのである。
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