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Ⅰ.はじめに
下肢切断者のリハビリテーションの成否は,各専門家によるチーム・ワークの在り方に左右されるといっても決して過言ではない.医師をはじめとして,義肢装具士(CPO),リハ工学エンジニア,看護婦や理学療法士(PT)などの多くの専門家によるチーム・アプローチによって,真に実用的な義足の提供に努めなければならない1).
このような背景の下で,理学療法士の担う役割は,切断端の機能的評価をはじめとして,義足の適合評価や装着状況などの具体的な情報を医師やCPOへ提供することや,看護婦と共に病棟での義足による日常生活指導,切断端の管理,あるいは工学エンジニアとの具体的な義足機能の評価や開発など多岐にわたっている.
一方,近年,義足を取りまく状況については,シリコンなどの素材の使用,従来と異なる概念でのソケット形状の変化などに代表されるように,その開発と進歩には目ざましいものがみられる.特に大腿義足では,坐骨結節と坐骨枝がソケット内に収納される坐骨収納型ソケット(Ischial-Ramal containment,IRC)や,荷重部位が坐骨一辺倒から坐骨および坐骨周辺部の軟部組織全体で行うものなどへと変化してきている2,3,4).さらにソケットの素材も,弾力性のある軟性ソケットを組み合わせたものなどが使用されている.また,膝継手機構においても,多軸膝や空圧および油圧機構を用いた遊脚相コントロールが盛んに用いられるようになってきた.さらに,立脚相で膝の屈曲伸展をコントロールする義足の試用もなされている5).下腿義足では,内ソケットにシリコンを用いた全表面荷重式ソケット(total surface bearing,TSB)による下腿義足の使用6,7)や,足部においては,エネルギー蓄積型の足部8,9)を各種選択できるようになり,これらを含めて義足の処方自体にも多くのバリエーションが可能となってきている.
このように義足の進歩に伴って新しい知見や知識が臨床の場面で必要となってきた.当然,実際に義足の適合評価や装着訓練を行う立場にある理学療法士に対しても,義足に関する様々な知識が求められるようになってきており,今回,このような背景を踏まえて,切断のリハビリテーションを施行する上で理学療法士として必要欠くことのできない義足の適合評価を中心に臨床的な観点から私見を交えながら概説を加える.
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