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Ⅰ.初めに
科学技術の進歩とともに義肢装具の材質も木・革から高分子化合物に変わり,それらの導入により,製作・修正が容易となり義肢装具の軽量化ももたらされた.大腿義足のソケット形状を例にとると,第二次大戦後,現在主流となっている四辺形ソケット(quadrilateral socket:以下QLSと略す.)が用いられるようになって30年余りが過ぎた.
しかし現在のQLSの形状に落ち着くまでに多少の変遷はあったにせよ,ほぼ変化の無いままに今日に至っている.Long1)は1975年の発表の中で,QLSを装着して起立位で撮影したX線写真の所見では,ほとんどの者の大腿骨がソケット内で外転位になっていると報告した.このときの発表が,後になって彼が提唱したLong's Line2)へと発展した.このため1975年のLongの発表は,今日,我が国でも普及しつつある3-7)CAT-CAMの源流に当たるものと思われる.
その後10年が経過し,Lehneis8),Long2),Sabolich9),Shamp10)らが従来のQLSとは異なるソケットを,義肢装具士の立場から製作法を中心に発表した.これらはLongがNormal Shape-Normal Alignment (NSNA),SabolichがContoured Adducted Trochanteric-Controlled Alignment Method (CAT-CAM),ShampがNarrow ML AK prosthesisと称しており,採型法やアラインメントのとりかたには差がある.しかし,坐骨結節がソケット内に包み込まれている点が共通しているために,国際義肢装具連盟(ISPO:International Society for Prosthetics and Orthotics)では1987年のMiami会議において,Ischial-Ramal Containment (IRC) Socketsの呼称を採択している11).現在日本国内ではCAT-CAMの呼びかたが一般的であり,本論でもCAT-CAMの表現を用いることとする.
今回はCAT-CAMの特徴を従来のQLSと比較しながら,その長所と短所とを述べる.また筆者らの行なっている理学療法の実際と,経験例に対して行なった床反力計による歩行分析,歪ゲージを利用したソケット内歪量計測の結果も紹介したい.さらに,CAT-CAMの適応に成功した例と難渋した例とを併せて紹介し,その結果から得られたCAT-CAM適応の指標についてもふれたい.
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