クリニカル・ヒント
慣性モーメント操作による骨盤回旋誘導の試み
福井 勉
1
1昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
pp.192
発行日 1994年3月15日
Published Date 1994/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103960
- 有料閲覧
- 文献概要
1.初めに
歩行時における骨盤回旋は,立脚期初期の同側骨盤の前方回旋,その後の後方回旋が通常観察される.しかし何らかの原因により,この骨盤回旋の左右差が大きくなり,種々の障害を来すことがある.立脚期中の回旋は骨盤より大腿,大腿より下腿が大きい1).したがって膝関節では,踵接地から立脚中期までは内旋する2).
しかし,患者の歩行を観察すると,左右対称的な骨盤回旋を示す例はほとんど無い.左右どちらかが骨盤前方位になってしまい,通常その側では骨盤挙上位にもなっているし,また上肢の動きも骨盤の動きとほぼ一致して非対称的になっている.こういった動きの変化が障害に結び付いていることは非常に多い,したがって,骨盤の回旋の対称性を図ることは有効な治療手段となりうると考えられる.
骨盤へ直接「重量となる重り」を密着させることにより水平面上の慣性モーメントは変化すると考えられ,試行した結果,骨盤回旋を最も変化させる部位があった.また同時に上肢に重りをつけることによっても骨盤回旋は容易に変化する.したがって,二次的に骨盤回旋は操作可能となる.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.