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1.初めに
21世紀の高齢社会に向けて「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」が策定され,高齢者の保健福祉分野における公共サービスの基盤整備が急速に進められている.10ヵ年戦略では,在宅福祉の緊急整備を第一の課題として位置付けており,高齢者が住み慣れた地域や家庭で安心して暮らし続ける社会にすることが,大きな目標の一つになっている.
この目標を達成するにはまず,住宅の構造そのものに着目する必要があるが,日本の住宅構造は,玄関や部屋の入口などに段差が多かつたり,便所や浴室なども身体機能の低下している高齢者には使いづらくなっており,高齢者やその介護者にとって快適・適切な住宅造りや増改築をすすめることが重要な課題になっている.
厚生省は1990年度から,建設省と協力して高齢者向けの住宅増改築の相談体制づくりを開始した.都道府県高齢者総合相談センターに住宅改造・介護機器専門相談員を配置し,日常の相談に応じるとともに,市町村や在宅介護支援センターの職員などに研修を行ない,住民からの相談に広く対応できるような体制づくりが進められている.
「高齢者の住宅増改築相談マニュアル」も本事業の一環として位置付けられるものである.マニュアルは,社会福祉・医療事業団(長寿社会福祉基金)の社会福祉振興事業により作成したもので,全国社会福祉協議会に設置した高齢者の住宅増改築相談マニュアル作成委員会〔委員長:野村歡(日本大学理工学部助教授)〕が編集した.
なお,建築分野では(財)日本住宅リフォームセンター・(財)住宅金融普及協会が「高齢化対応住宅リフォームマニュアル」を工務店向けに作成している.内容的には本マニュアルと調整が行なわれており,福祉関係者と実際に建築を行なう工務店などとが共通の理解に立てるようにしている.
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