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Ⅰ.初めに
人間の生涯にわたる健康増進の必要性が気付かれ,その中にしっかりとリハビリテーションの思想と技術が根づきつつある中で理学療法士に求められている守備範囲も自ずと拡がりと深みを加えつつあるようにみえる.保健活動の中で心身の障害や高齢といった健康上の不利をもつものにおいても,健康で文化的な生活を営んでいく可能性を示していく上で,理学療法士の果たしていく役割はますます大きなものとなっていくと思われる.保健分野においてリハビリテーションを明確に位置付けるようになった契機として老人保健法機能訓練事業の実施による影響は大きく,それぞれの持ち場で営々と積み重ねられてきた実践は在宅障害老人の福祉と健康に寄与してきた.
地域や家庭の中でさまざまな障害をもちながらも普通にその人らしい生活を実現していくための全人的援助の考えかたは,広くこの仕事に携わるものの基盤的認識となり,人間性の回復を促進するという普遍的課題を意識させるものとなっている.社会的不利を軽減し生活の質の向上を目指すリハビリテーション本来の理念に立った実践活動は種々の形で行なわれている直接的援助活動をつなぎ合わせ,有効に作用するための在宅ケアシステムの構築も志向させていっている.こうした中で機能訓練事業は社会参加,交流の一つの形態として,障害をもった在宅生活者の生活再建に効果が認められ,福祉保健の各種施設で実施されており,保健所もその一つの実践舞台である.保健所で実施される機能訓練事業は保健活動の一環としての特徴をもってくるとともに,保健所という活動体がもっている特性や歴史性に影響を受けていくことになる.
ここでは保健所における理学療法の実践のテーマについて,保健所をめぐる動向,千代田区の状況および特別区での常勤理学療法士として老人保健法機能訓練事業に携わる中で学び,気付いた点を述べていくことにする.
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