特集 脳卒中;回復期以降の理学療法を中心に
回復期も,その後もいつも生活期
石田 卓司
1
1伊豆逓信病院理学診療科
pp.25-26
発行日 1991年1月15日
Published Date 1991/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103178
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日常,私たちと時間を共有する脳卒中の人たちの様態は,千差万別である.発病後直ちに,必要にして十分な治療・看護が施され,続いてリハビリテーション・スタッフがそれぞれの役割を全うするといった,それこそ絵に描いたような治療を受けられる患者はそう多くない.少なくとも私たちが体験する現実は,そうである.脳卒中の初期のケアが重要だとする主張は,そうした実情によってあっけなく無化され,最初の3か月が勝負だ,いや6か月だという議論はしばしば空疎なものになる.
回復期と呼ばれる時間を無為に過ごすことによる損失は,確かに大きい.この時期のケアの質が,ひとりの患者のその後の生を決定する場合も珍しくない.あだやおろそかにはできない道理である.しかし,そのことを承知で敢えて言うなら,そこに価値を置くあまり,回復期の,身体の機能性の変化だけに関心を注ぐ向きがなくはない.そして,要素的機能の改善が目立たなくなると,プラトーなる不可解なことばを登場させる.“プラトー!”と言えばこれは,セラピストの関心や興味が尽き,役割が終わり,いわゆるその後はもうどうでもよく,無きに等しいという意味であるらしい.したがって,急性期に続いてきたるべき事態について,ほとんど語ることが無いのである.「回復期以降」という奇妙な言いかたが当然のようになされている所以(ゆえん)であろう.
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