とびら
精髄に触れる
武原 光志
1
1光風会 特別養護老人ホーム光の苑
pp.961
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102616
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私は,玄海灘に浮かぶ離島の壱岐(長崎県壱岐市)に住んでいる.壱岐に生まれ,高校卒業と同時に島を離れたが,40歳を前に理学療法士になり,島に帰った.はじめは病院に勤務し,5年後,老人保健施設に異動,現在は関連の特別養護老人ホームに勤務している.島に帰って21年が過ぎるが,先日,この20年あまりを振り返る機会を得た.理学療法士としての仕事を始めたころの忘れられない患者であるZさんが96歳で生涯を終えられたことによってである.
理学療法に従事して3年が経過したころ,医師会長をされていたZさんが脳梗塞で倒れられた.私はボスである病院長に連れられて,その日の夜,Zさん宅を訪ねた.完全な左麻痺を呈していたが,ご家族は,入院せず自宅で経過をみること,状態が落ち着けば訪問でのリハビリテーションを希望された.翌々日,CT画像をみせていただいたが,右の前頭葉から後頭葉にかけて広範囲にlow densityが認められ,右中大脳動脈の起始部近くで梗塞が起きているとのことであった.
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