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梅雨空に晴れ間が見えると清々しい気持ちになります.五月晴れ.最近では5月のスカッとした晴れ間をそのように呼ぶ人も多くなっているようですが,もともと梅雨空の合間に見える晴れ間のことを言うのだそうです.つまり,日本では古くは陰暦を用いていましたから,陽暦6月から7月の梅雨は陰暦でだいたい5月に当たるわけです.自然を相手にしながら,生活の中で空気を感じて生み出されたことばです.日本人であれば誰もが同じように爽やかなイメージを「五月晴れ」に抱いているのではないでしょうか.そのときの青空を見に,そしてその空気を胸いっぱい吸いに外に飛び出してみたくもなります.これが文化であったり,風土であったり,その環境にいてはじめて理解しうる感覚あるいは情動なのでしょう.その環境で生活するということは単に運動機能が向上すればよいというものではないのです.理学療法士はややもすれば運動機能にのみ注目しそうですが,このような些細なことも含みながら臨床活動を展開していかなければならないと思います.
今月号の特集は「生活機能向上のための理学療法」です.ICFで示した心身機能・身体構造,活動,参加という3つのレベルの生活機能に対して,理学療法士はどのように迫っていくか,5名の方々にご執筆いただきました.生活機能の向上に理学療法士の知識や技術が極めて重要であると同時に,それを存分に活用できない悔しさを感じている備酒伸彦氏,回復期リハビリテーション病棟では患者を生活者の視点で見据え,彼らが望む暮らしをイメージしながら専門職はリハビリテーションサービスの内容を考えていく必要があると淡々と述べる岡野文男氏,生活機能向上を意図した理学療法の本質は病院でも施設でも在宅でも変わることはなく,むしろ地域でこそ運動学的な理学療法の専門性を生かす場面が多いという金谷さとみ氏,福祉用具を活用することで生活機能を改善することができるし,またそれらの適合について理学療法士の積極的な関与が必要であるという吉川和徳氏,生活機能向上を意図した教育ではその現場を直接学生に見せること,他職種との連携の重要性と困難性を十分認識させることが大切であるという松谷綾子氏.この特集に触れて,生活機能向上を目的とした理学療法のあり方が少し見えてきたように感じませんか?報告の大垣昌之氏も短報の今村純子も,論文の向こうに生活機能向上のための理学療法への模索が読みとれます.生活機能,改めて意味を考えなければならない重要なキーワードです.
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