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はじめに
心筋障害が高度で広範囲に及ぶ末期的重症心不全症例に対しては,薬物治療の効果に限界がある.そのような症例に対しては,心ポンプ機能の代行が必要であり,最終的な外科的治療として心臓移植が考慮される.心臓移植は,末期的心不全に対する現状で最も確実な治療手段とされているが,わが国では適当なドナー心が限られている.日本心臓移植研究会のレジストリ報告によると,2010年1月17日の改正臓器移植法施行後,脳死臓器提供が増加したことに伴い,法改正前(12年9か月)の脳死臓器提供43件,心臓移植69件が,法改正後1年5か月で脳死臓器提供71件,心臓移植51件と心臓移植の実施数も増加している.しかし,同時に心臓移植登録者数も増加傾向にあり,待機日数が飛躍的に減少するまでには至っていない.
このような心移植の現状に対し,補助人工心臓(ventricular assist system:VAS)はいつでも施行可能な循環補助手段として適用されるようになってきた.Randomized Evaluation of Mechanical Assistance for the Treatment of Congestive Heart Failure(REMATCH)Study1)により,内科治療に対する左室補助人工心臓(LVAS)治療の優位性が示されたが,体内設置型拍動流式LVASの成績は決して満足し得るものではない.
さらに感染,出血,デバイス作動不全などの重篤な合併症が比較的高い確率で起きることも明らかとなり,永久使用を目的とするLVAS使用が広く行われるには至っていない.その問題点として,装置自体が大型であること,駆動部分に人工弁などが必要で,これが耐久性を規定していることなどが挙げられる.そこで,より小型で耐久性に優れた装置が求められ,それに応える形で回転型(遠心ポンプ式・軸流式)の定常流型LVASが登場した.
わが国においても,昨年より在宅での移植待機が可能となる小型の埋込型遠心ポンプ式LVASが保険適用となり,これまでの体外設置型で行われてきた長期入院中の維持的なリハビリテーションから,今後は自宅退院,社会復帰を念頭に入れたリハビリテーションへと変わっていく可能性が考えられる.
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