書評
―W. F. ボロン,E. L. ブールペープ(編)/泉井 亮(総監訳),河南 洋,久保川 学(監訳)―「カラー版 ボロン ブールペープ 生理学」
二唐 東朔
1
1東北メディカル学院
pp.110
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102188
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リハビリテーション(以下,リハ)が,従来からの運動器障害・脳卒中片麻痺障害領域から,嚥下・心臓・肺・腎臓リハなどの臓器別疾患へ,一方,統合失調症障害から,高齢社会構造変化に伴って,脳機能老化によるいわゆる認知症障害へとその職域を急速に広げている.これらに携わる療法士はその都度,研修会,講習会等に参加して,その臨床知識の獲得に努めている.しかし,その障害原因となる生体機能の仕組みを各養成校で学ぶことはカリキュラム上からも困難なのが現状であり,それを補充するのは最新版の生理学テキストの自学学習に頼るしかない.
本書の原書は数年ごとに改訂し,最新の事象に基づき再編纂に努めているが,注目すべきは,教育・研究に携わったその専門領域の草稿をベテランの臨床医が,丁寧に加筆訂正をして,読者への容易な理解を目指していることである.さらに加えて,読者の視覚的理解を活用するために,詳細な挿入図が数多く採用され,あえて本文を読まなくても一見して,その事象の全体像の流れがイメージできるように工夫されている.臨床場面で用いられる用語と生理学用語をリンクさせているので,遭遇する臨床症状の起因となる生体機能のページを探しやすいことである.付録の「BOX」のエピソードは,生理現象を臨床事象から俯瞰できるので,読者の視点を深化させ,研究心を鼓舞すると思われる.内容が盛り沢山なために,分厚くなり持ち運びには不便であろうが,座右の書としてお薦めしたい.
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