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はじめに
糖尿病患者において,糖尿病性腎症(以下,腎症)は生命予後およびquality of life(QOL)に与える影響が大きな合併症である1).近年,わが国における累積慢性透析患者数は頭打ち状況にあるとされているが2),2009年末の統計では慢性透析療法を実施している患者数は29万人を超え,2009年の導入患者数は37,543人となっている3).なかでも,腎症は新規に導入される患者の原疾患の中で,1998年に慢性糸球体腎炎を抜いて第1位となって以来増加の一途を示し,2009年では1年間に導入された患者の44.5%に達している.
腎機能が低下すると,心血管疾患の発症リスクが高くなるとともに,死亡や入院のリスクが高くなることが明らかにされ4~7),腎移植や透析導入に至る末期腎不全,心血管疾患死の予備軍としての慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)という概念が数年前から注目されるようになっている.CKDは「尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか(特に蛋白尿の存在が重要)」「腎機能低下:糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が60ml/分/1.73m2未満」のいずれか,または両方が3か月以上続く状態と定義されており,その腎機能(GFR)の進行度によって5つに分類されている8).CKDは単一の疾患ではなく,腎症や慢性糸球体腎炎などの慢性疾患群の総称であり,その主要疾患としての腎症の対策が急務となっている.
本稿では,このような腎症に対して,臨床経過に対応した生活指導を含めた,理学療法士として備えておくべき知識について概説する.
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