特集 ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームの要因としての腰部脊柱管狭窄症に対する理学療法
伊藤 俊一
1
,
菊本 東陽
1
,
西原 賢
1
Toshikazu Ito
1
1埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科
pp.309-314
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101921
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はじめに
ロコモティブ(locomotive)とは運動器(locomotive organs)の意味であり,ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome,運動器症候群)とは,運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態とされている.これは日本整形外科学会により2007年(平成19年)に提唱された新しい概念であり,人間は運動器に支えられて生きており,運動器の健康には医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしいというメッセージが込められている1).
加齢により,様々な運動器疾患が発症,進行する.例えば変形性関節症,骨粗鬆症に伴う脊柱後彎,易骨折性,変形性脊椎症,脊柱管狭窄症,関節リウマチなど運動器自体の疾患により,疼痛,関節可動域制限,筋力低下,麻痺,骨折,痙性などを原因として,バランス能力,体力,移動能力の低下,易転倒性の増加などによる運動器機能不全を来す.その結果活動制限が生じて廃用症候群や閉じこもりとなり,健康寿命の短縮が生じることが重大な問題となる.
本稿では,日本整形外科学会の定めた「運動器不安定症」の概念の中で運動機能低下を来す疾患の中から,腰部脊柱管狭窄症に焦点を当てて,その概要と治療,予防のための理学療法に関して解説する.
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