特集 ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム―下肢の疾患・障害に着目して
田中 聡
1
,
長谷川 正哉
1
,
藤井 保貴
2
,
江村 武敏
3
,
宮本 賢作
4
Satoshi Tanaka
1
1県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
2医療法人社団聖心会阪本病院リハビリテーション科
3医療法人社団トータルケアグループ優輝整形リハビリステーションリハビリテーション科
4福山市立大学都市経営学部
pp.299-307
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101919
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はじめに
理学療法士(以下,PT)は,従来から医療・介護保険分野において運動機能障害に対する運動療法を実施しており,さらに加齢による運動機能障害予防や介護予防事業に関わり,近年その効果が明らかになってきている1,2).また,PTは運動器疾患に関わる専門職として,潜在的な運動器の障害を早期に発見し,障害予防のための方略を立てるという重要な役割を担う.
2008年に(社)日本整形外科学会は,ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome:以下,ロコモ)という新たな概念を掲げ,その定義として「骨,関節,筋肉など運動器の障害のために,移動能力の低下をきたして要介護になるなど,要介護になる危険の高い状態である」とした3).この概念は,加齢現象の1つとしてとらえられていた運動機能の低下を自身で早期に気づき,意識改革を起こし,その機能低下を防いでいくことがいかに重要であるかを国民に啓発するものである4).PTはそれらの対象者の健診・評価や治療に関わる重要な職種であり,ロコモの概念を正しく理解し臨床に活かすことが求められる.本稿では,ロコモについて変形性膝関節症(以下,膝OA)を中心とした下肢関節障害との関連を探り,その特徴を明らかにしたい.加えてロコモ状態にある下肢関節疾患の運動療法を概観し,下肢関節への負担度を考慮した動作指導ならびに生活環境面へのアプローチについて解説する.
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